<全仏オープン2013コラム>コート上で人々を魅了する“キミコスマイル” | 伊達公子 公式サイト

COLUMN

2013.06.01

<全仏オープン2013コラム>コート上で人々を魅了する“キミコスマイル”

クルム伊達公子(全仏オープン2013)「公子はいつもポジティブでファイター。それにいつも笑っているの。彼女と一緒にプレーすると、私までハッピーな気分になるわ!」

全豪オープンに続き今大会でもダブルスを組んだアランチャ・パラサントンハは、心からハッピーそうな笑みを浮かべて、クルム伊達の印象を語った。

そう、今のクルム伊達は、本当にコート上で楽しそうだ。なかでも顕著なのが、ダブルスでの姿だろう。笑顔を絶やさず、パートナーと談笑し、一つひとつのプレーで喜怒哀楽をあらわにする。そしてもちろん、重要な局面では勝負師の顔になり、勝利への情熱が眼光となり相手を射る。


何かにつけて彼女の年齢に触れるのはもはやナンセンスだが、42歳がコート上で描く円熟の技と知性、そして好きなことに打ち込みつつ楽しむ姿勢は、ファンのみならず、周囲の選手たちをも引き込んでいる

そんなクルム伊達が明かす「20代の頃は、空港に行く途中に『パスポートが期限切れになっていればいいのに』と思うほど、海外に行くのが嫌でしかたなかった」と言う過去は、当時の彼女を知らない人には信じがたいかもしれない。

海外遠征が嫌で、飛行機の中で人知れず涙を流した20代の頃から、約20年――。今のクルム伊達は「嫌い」と公言しはばからない赤土の上ですら、トレードマークとなったスマイルをたたえ、多くの人々を魅了していた。

【シングルス】
クルム伊達公子 0-6 2-6 サマンサ・ストーサー

クルム伊達公子(全仏オープン2013)大会3日目に行われた、シングルス初戦のクルム伊達対ストーサー戦。上空を覆う雲は厚く、朝から時折、シトシトと細かい雨が赤土のコートに降り落ちた。30年ぶりの異常気象だという5月のパリは寒く、気温は10度前後までしか上がらない。「今年のクレーシーズンの目標は、ケガなく終えることです」と言うクルム伊達にしてみれば、最悪とも言える気象状況である。

クルム伊達が今大会、結果より何より「健康」を重要視するのは無理のないことだった。昨年のこの時期は、慣れないクレーでケガを重ねながらもプレーを続け、結果として半年以上も勝ち星に見放される時期を過ごしている。その反省を踏まえ、今年は元よりクレーへの出場を控える予定だった。そこに加え、3月に痛めた腰痛が4月の岐阜で悪化したため、プラハ大会の出場を取りやめている。

結局、全仏の前に踏めた実戦の場は、ストラスブルグのダブルスのみ。そのダブルスで優勝する快進撃は見せたものの、クレーでの準備不足は否めない。ましてや全仏オープン初戦の相手は、3年前の準優勝者のストーサーだ。そのような状態で勝利を狙えるほどツアーが甘くないことは、当のクルム伊達が誰より深く知っているだろう。

それでもひとたびコートに立てば、勝負師の本能がクルム伊達を突き動かす。第1セットこそ、クレーで威力を増すストーサーのキックサーブとフォアのスピンに苦しんだが、試合が進むにつれタイミングをつかみだしていた。「ファーストセットの終わりくらいから、ポイントには繋がらなかったものの、少しずつ良いテニスは出来ていた」と言うように、左右のみならず高低にもボールを打ち分け、コートを広く使っていく。1-4とリードされた第2セット第6ゲームでは、互いにネット際にボールを落とすドロップショット合戦を制し、2-4と追い上げた。

“逆転の伊達”の逆襲が始まるのか――!? そんな期待感が、スタジアムを満たし始めた。
ところが、続くゲームでのことである。ストーサーの低く滑るスライスを巧みに返したかと思いきや、主審に「2バウンド」の判定を受けるアクシデント。手元に引き寄せかけた流れに、水をさされた形となった。

どこか釈然としない、後味に苦味の残る敗戦。だが試合後のクルム伊達は「今日は、ストーサーのスピードとパワーにやられた」と、時おり笑顔も交え相手のプレーを称賛した。ベストのプレーは出せなかったものの、「自分のテニスを見失った感はなかった」という手応えがその理由だ。「ケガなくコートに入っていけば、どこかで結果はついてくる」とも信じている。

「照準は当然、ウィンブルドン。ここ(クレー)を捨てた分、芝では頑張りたい」

視線は早くも、次なる戦いに向けらている。

【ダブルス】

1回戦 クルム伊達公子/アランチャ・パラサントンハ 6-4 6-3 クリスティーナ・マクヘール/タミラ・パシェック
2回戦 クルム伊達公子/アランチャ・パラサントンハ 6-2 5-7 2-6 サマンサ・ストーサー/フランチェスカ・スキアボーネ
 

クルム伊達公子(全仏オープン2013)今季、すでに3勝。しかも組んだパートナーは、いずれの大会でも異なっている。

今回の全仏でダブルスを組んだパラサントンハは、それらの優勝を共にしたパートナーではない。それでも今年の全豪オープンで初めて組み、いきなり3回戦進出の好成績を残した。何よりスペイン人のアランチャは、赤土を最も得意とする。気合も十分、常にポジティブ。1ポイントごとに「バモス!」と叫んで気持ちを盛り上げる、頼もしい相棒だ。

加えるなら、強烈なサーブを持ちボレーも得意な長身のスペイン人は、クルム伊達にとって、もっともダブルスらしい試合が望めるパートナーかもしれない。

「アランチャはボレーも上手いし、リーチや高さもある。ロブに弱い私の弱点も理解しカバーしてくれる」クルム伊達はパラサントンハをそう評し、パラサントンハも「キミコはリターンが素晴らしいし、動きが速い」とパートナーに全幅の信頼を寄せる。初戦ではIフォーメーションも積極的に取り入れ、ダブルスならではの動きで「シングルスプレーヤー二人」のペアを退けた。

クルム伊達公子(全仏オープン2013)2回戦でも立ち上がりから、ダブルス巧者の日西ペアが、コンビネーションにぎこちなさを見せるストーサーとスキアボーネの“2010年決勝ペア”を突き放しにかかった。パラサントンハがエースを連発しポイントを重ねれば、クルム伊達が脅威のコートカバー能力でロブやドロップショットを切り返す。第1セットは4ゲーム連取などで一方的に奪取。第2セットも3-1とリードし、パラサントンハのサービスゲームを迎えていた。

ところが、第1セットはあれほど効果的だった彼女のサーブが、このゲームでは入らない。

「ファーストが入らずサーブが悪かったせいで、相手を勢いづかせてしまった…」パラサントンハも試合後に、真っ先にこのゲームをターニングポイントに挙げて悔いた。

だが、クルム伊達は相手の実力を認識した上で、リードの場面でも「これで勝てるという安心感は無かった」と振り返る。「ちょっとしたアンラッキーなポイントもありリズムを崩してしまったが、完全に崩されたり、形を失って取られた訳ではない」と、自分たちのプレーへの自信と誇りも持っている。

「もったいないはもったいないけれど、これがダブルス」
ダブルスの真髄を知るからこその、クルム伊達の潔い言葉だ。

この敗戦をもってクルム伊達のクレーシーズンは幕を閉じたが、赤土でもダブルスを楽しめたのは、次につながる大きな収穫だろう。37歳での現役復帰を「ダブルスも含んだ上でのチャレンジ」だと言うクルム伊達は、「テクニック、展開力、そして勝負強さを養うのにも良いので、ダブルスは続けていきたい」と、今後も二足のわらじに意欲的だ。

「ここまで来たら、ダブルスは昔の私(1992年8月の33位)を抜きたいなと思います」
明確な目標を得て、チャレンジは加速する。


クルム伊達選手からのコメント

――全仏オープン前に、冗談半分かとは思いますが、「パリではグルメツアーが楽しみ」、「エッフェル塔に登りたい」ということを言っていました。実際に今回は、パリで観光したり美味しい物を食べたりしたでしょうか?

クレーは捨てて…..とは冗談半分ではありつつも怪我だけは避けたい気持ちは本気でした。

ローラン・ギャロス入りするのはストラスブルグでのダブルスが優勝になり予想以上にギリギリになりました。ほとんどシングルスの練習ができないまましかもドローができた段階でかなりタフなドローになったのをみてますます怪我だけはできないと思いました。

試合は、やはり慣れる間もなく少し慣れ始めた辺りで終わってしまいました。もちろん不完全燃焼ではありましたが今年は自分自身に期待をしなかったし諦めがつきました。そして何より怪我なく戦い終えれたことにもほっとしました。

パリに滞在している間、今年は珍しく日本食の回数が多かったです。ストラスブルグでフレンチ続きだった事もあってか体が日本食を欲していた感じ。とは言えかなりフレンチも行きました!日本食は5回くらいかな??まだまだ行きたいところはあったけれど予約が取れなかったり遅い時間じゃないとダメだったり休みだったりいろんなことが原因で実現しなかったのもあります。

さすがに観光……とまでは気持ちの上で行けなかったです。マイアミでゴルフをして腰を痛めたこともありパリでは石畳が多いからあまり長く歩いたりしないようにしていました。よって食事に行く事が1番の楽しみでした。やっぱりパリの食のレベルは高いからどこへ行っても基本美味しい。カフェでのんびり時間を過ごすだけでも贅沢な時間で飽きる事なくぼっーと過ごせます。

今回は日本食が多かったから白ワインにも目覚めました。これまではお酒をいただくときには赤ワインか日本酒だったのですが……また食の楽しみが増えそうです。

でも……イギリスへ来てインディアン、タイ……とアジアづいています。ロンドンへ行けばまた多少は広がりますが!

私にとって旅の食はエネルギーの元でもあるんです。

取材・文:テニスナビ
写真:佐藤ひろし

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