新たなチャレンジ始まる、台湾からインドへ | 伊達公子 公式サイト

COLUMN

2012.11.06

新たなチャレンジ始まる、台湾からインドへ

今年から"WTAチャレンジャー"という新たなカテゴリーとして始まった台湾トーナメント。その新大会の初代女王を目指したクルム伊達の挑戦は、3回戦で19歳のムラデノビッチに阻まれた。

初戦から苦して厳しく、それゆえにクルム伊達の真骨頂ともいえる戦いだった。1回戦で相まみえたのは、413位で31歳のアレクサンドラ・スティーブンソン。とはいえ、彼女の実力を数字だけで測ることなど不可能だ。10年前には18位に達した実力者であり、何より18歳時に、グランドスラムデビュー戦のウィンブルドンでベスト4入りした、かつての天才プレーヤーである。しかも父親は、アメリカバスケットボール界の伝説的選手。ケガに苦しみ長くコートを離れていたが、185cmの恵まれた身体から放つ高速サーブと父親ゆずりのバネは依然健在。その最大の武器であるサーブと、パワーあふれるストロークが、インドアのコートでクルム伊達を悩ませた。

それでもクルム伊達は、相手のダブルフォルトやセカンドサーブの少ないチャンスを生かして、ブレークにも成功する。第1セットは6-4。第2セットは相手にブレークを許し3-6。そして一進一退の攻防となった第3セットでは、クルム伊達が相手のサービスゲームで、0-40と3つのマッチポイントを握ることに成功する。

だがここで相手も意地を見せ、クルム伊達はチャンスをものにすることができずにタイブレークへ。サーブ力を考えれば、タイブレークではスティーブンソンが有利かと思われた。

だが、緊迫感が頂点に達する極限状態の戦いで、勝負強さを発揮したのはクルム伊達の方だ。緊張に飲まれ硬さが見えるスティーブンソンはミスが増え、そしてその心技のすきを、百戦錬磨のクルム伊達は見逃さない。最後は6-5からフォアのウイナーを叩きこみ、2時間23分の熱戦の末に勝利をもぎ取った。

シングルス2回戦の日には、ダブルスの初戦も入るダブルヘッダーとなったが、シングルスでは香港の張玲を、6-1、6-2で一蹴。ダブルスでも、6-1、6-1のストレート勝利を収め、体力を温存して挑めた3回戦。

だが現在のムラデノビッチは、身心ともに充実した急成長の最中にある。8月末の全米オープンでは3回戦進出。9月のケベックシティ大会では準決勝入りを果たすなど、試合をするごとに経験値を高め自信を深めている。特にこの日のクルム伊達戦では、ミスらしいミスもない "当たりの日"であった。

試合立ち上がりは、互角の展開だった。むしろチャンスの数では、クルム伊達が上回っていたと言える。だが、3-4からのサービスゲームでブレークを許すと、ここからムラデノビッチが走りだした。180cmから打ち下ろすサーブ、そして早いタイミングで放つ左右の強打がことごとくラインを捉える。加速する19歳はそのまま最後まで駆け抜け、試合時間は57分。「相手が良すぎたと思うしかありません」と、クルム伊達もムラデノビッチを称える敗戦だった。

■シングルス
1回戦 クルム伊達 6-4 3-6 7-6(5) アレクサンドラ・スティーブンソン
2回戦 クルム伊達 6-1 6-2 張玲
3回戦 クルム伊達 3-6 0-6 クリスティナ・ムラデノビッチ

シングルスで敗れた後も、クルム伊達の台湾大会は続いていた。仲の良い台湾人選手のCHAN, Chin-Weiと組んだダブルスでも、勝ち進んでいたからだ。

第3シードとして出場した日台ペアは、初戦と2回戦を格下相手に快勝。準決勝でチャン・カイチェン/オリガ・ゴボルツォワ組と対戦した。今大会の第2シードでもあるこの2人は現在絶好調で、特にチャン・カイチェンはシングルスでも決勝まで勝ち進んでいる。その自信が、プレーに余裕をもたらしているだろう。クルム伊達/CHAN, Chin-Wei組は善戦するも、4-6、3-6で惜敗した。

■ダブルス
1回戦 クルム伊達/CHAN, Chin-Wei 6-1 6-1 YANG, Zi/JUAN, Ting-Fei
準々決勝 クルム伊達/CHAN, Chin-Wei 6-3 6-2 HSU, Ching-Wen/LEE, Ya-Hsuan
準決勝クルム伊達/CHAN, Chin-Wei 4-6 3-6 張凱貞/オリガ・ゴボルツォワ

これで全日程を終えたクルム伊達は、インドでのWTAチャレンジャーに出場すべく、台湾を去る。自身初となるインドでの、未知なるチャレンジがまた始まる。


クルム伊達選手からのコメント

――1回戦のスティーブンソン戦で、マッチポイント3本を逃しタイブレークに入った時は、どのように気持ちを切り替え、タイブレークでは何を心がけたのでしょうか?

相手がビックサーバーなのでマッチポイント3本を逃したと言っても仕方がない。最後の最後まで結果がどうなってもおかしくなかった試合でした。

タイブレークも最初から追いかける状況になってしまったので、とにかく相手のサービスの時、ファーストサーブが入らない事だけ願うばかり。

最後の最後、大切な場面になってサーブの確率が落ちたりショットの精度も落ちると
信じ、その時をじっくり待つのみでした。

そのためにも集中力を切らさずポイントを離されないように心掛けました。

記事:テニスナビ
写真:佐藤ひろし