ラストスパートではない、新たなチャレンジへの序章 | 伊達公子 公式サイト

COLUMN

2012.11.27

ラストスパートではない、新たなチャレンジへの序章

今シーズン、残り2大会――。規定の枠に収めて言うなら、そういうことになるのだろう。だがテニス選手にとっての新シーズンとは、1月1日よりも早くに既に幕を開ける。クルム伊達にとり今季最後のトーナメントとなるドバイ大会が始まるのが、11月26日。つまり実質、シーズンオフは無いと見るべきだろう。それがクルム伊達が選び、そして挑む、新たなチャレンジだ。

今のクルム伊達は、試合を欲している......今季の彼女の足跡や発言を追っていくと、そのように思えてならない。「試合数をこなすことで、調子が上がるという側面があります。なので状況に応じてITF大会にも出場していこうと思っています」、そのようにスケジューリングについて口にしていたのは、今年3月のことである。だがその後のクルム伊達は、度重なるケガのため、望んだ試合数をこなすことができなかった。7月から8月上旬を治療とトレーニングにあてたことでケガは完治したが、空白の期間で失った"試合勘"を取り戻すには、何より実戦が必要だった。だがその余裕もなく、全米オープンや東レPPOなどの大きな大会を駆け抜けてきた。だからこそ今、クルム伊達は試合で勝ち、連戦の中で肉体と対話しながらテニスに磨きをかけていく感触を、何より重要視しているのだろう。リモージュ(フランス)と台北(台湾)大会ではベスト8、先週のインド・オープンでは決勝進出。選んだ道と確固たる意志の正しさは、数字にも表れ始めている。

そのように、テニスの質を向上させながら結果を求めるクルム伊達にとり、来週のダンロップワールドチャレンジテニストーナメントとその翌週のドバイ大会は、それぞれ異なる意味合いを持ってくる。

愛知県豊田市で開催されるダンロップワールドチャレンジテニストーナメントは、2009年に優勝、昨年は準優勝している大会だ。過去の好成績に加え開催地が地元(京都)に近いこともあり、当然のようにクルム伊達への注目度は高くなる。日本人選手の出場が多いため、互いに手の内を知った相手との対戦も増えるだろう。他の地とは異なる雰囲気や、重圧の中での大会となるのは間違いない。勝つことを期待される中で、如何に持てる力を発揮していくかの戦いとなるはずだ。

そして、2012年を締めくくるドバイ大会。この砂漠の地で開催されるトーナメントは、あらゆる環境が豊田から一変する。まずは、気象が大きくことなる。会場は、アウトドアのハードコート。豊田のインドアカーペットからの適応力が、まずは一つのカギとなるだろう。

さらには参加予定選手の顔ぶれも見ると、52位のイリナカメリア・べグを筆頭に、56位のボヤナ・ヨワノフスキなど、トップ100の選手が5人も出場するハイレベルな大会となっている。しかもそれらの選手の多くが、10代から20代前半の伸び盛りの選手たち。若く勢いも野心もある選手たちが、来季に向け1つでも上を目指し集結するのが、ドバイなのだ。過酷で熱いこの大会は、クルム伊達が追い求めるテニスの完成度を測る、一つの試金石となるだろう。
  
残り2つの大会をもって、暦の上では2012年シーズンは終了となり、1つの区切りがつくことになる。だがクルム伊達は来シーズンを既に視野に入れ、これらの大会へと向かっていく。

だから、来週のダンロップワールドチャレンジテニストーナメントと再来週のドバイ大会は、今シーズンのラストスパートではない。これは来シーズンに向けた、新たなチャレンジへの序章である。


クルム伊達選手からのコメント

――シーズン終盤となり疲労も大きいこの時期、ITF大会にシーズン終了間際まで参戦することを決めた心境と、これから2大会(豊田、ドバイ)に向けての目標を教えてください。

シーズン終盤とはいえ、私の気持ちはアジアシーズンから最後まで行く覚悟ができていたのでシーズン終盤と言うほど体力的、精神的疲労は今のところあまり感じずにいます。

ヨーロッパシーズンはほとんど動けなかったし、その分、今この時期に動けることに
満足しています。確かに最高の結果が付いて来ているわけではないけどそれでも怪我なく韓国からシングルス&ダブルスで戦ってこれているので十分です。

ヨーロッパで思うように動けなかった分、今年は大会がある限り戦い続けようと決めました。ウィンブルドン後、せっかくリハビリ、トレーニングと積んで、いい状態に戻せた今、シーズン終盤だからと終わらせる必要はないかなと思いました。私は2012年終盤から2013年スタートをシーズンオフと捉えずシーズンインしようと考えました。

シーズンオフを取って一度、体をリフレッシュすることも大切ですがオフにしてしばらく鈍ってしまうとまたきついトレーニング期間を作るより、今の延長でそのまま突っ走ってしまうだけのエネルギーはまだ残っているから。

豊田、ドバイではこれまでと何も変わりません。自分のテニスを追求しつつ、そのときそのときにできるベストを尽くすのみ。昨年のような執念で全豪の本戦を目指しているわけではありません。

今は、来年の全豪は予選で戦いたいと思っています。この数年グランドスラムの厳しさは何度も味わったし大きく、トータル的にいろいろ考えると予選でじっくり戦う事も悪くない。グランドスラムはやはり特別だし、本戦の位置にいたいと思う気持ちが消えたわけではないけれど今の私には予選の中で揉まれながら1つ1つ重ねて行く方が自分のテニスにはいいように思うから。

これまで何度も本戦は経験しているから、いまさら拘ることもないかなと思うようになりました。だからこの残っている豊田、ドバイも自分のテニスの追求のためでランキングのためではないです。

記事:テニスナビ